肯定の姿勢は「相槌/反復/質問」として外に現れることによって、著者の思考、アウトプット/インプットの循環、新しい世界の生成を加速させる。
要素の整理を行う平面と、平面に対して垂直方向に加えられる補完の作業。これらはいずれも、著者と編集者の「話す/聞く」やり取りによって進められていく。編集の目的は、著者の思考の中へと入り込むこと、著者の思考に寄り添うことによって、著者がこれまで気づいていなかった、新しいコンテンツの可能性を汲み上げるところにある。こうした状況/作業そのものを支え、かつ推進させていくための力となるのが「肯定」である。
編集者は否定をできる限り遠ざける、ということはすでに述べた。本の完成イメージに対して、「正しい/誤っている」という判断は存在しない。存在するのは、どちらが「よりよいか/より悪いか」という相対的な判断であって、その判断の精度は仮説の数によって担保される。編集者が否定をすると、そこには「正誤」の判断基準が生まれ、価値の絶対化が図られてしまう。
バリエーションAとB、Cがあった場合、編集者はどれかを選ぶものの、選ばれなかったバリエーションは否定されたわけではない。編集者は疑問を呈するが、それは否定を目的とするものではなく、仮説を立てるためのものだった。仮説の1つであるバリエーションは、肯定の上に乗せられている。編集者は疑問を呈しても、削除はしない。選ばれなかった仮説/バリエーションはいったん脇に置かれるが、いつでも再発見、再利用されうるために保管されてある。
続きを読む →