こんにちは。
LITTLE MAN BOOKSの大和田です。
現在LITTLE MAN BOOKSでは、刊行を予定している、いくつかの本を制作しています。そしてそれらのどの本も、これから先どのような内容になるのか、まだ定まっていません。5%、20%、50%できあがっていてもなお、残りの50%や80%、95%は、どのようになるかが見えていないのです。それはたまたまそうなってしまったわけではなく、あえてそのように制作しているのです。
先の見えない制作というものは、常に、この先どうなるかわからないという不安を抱え込むことになります。本来であれば、先に設計図をきちんと作り、完成へと至るための行程をしっかりと計画し、決めたフローに従って着々と作業を進めていく。そのような作り方こそ、不安もなく、効率よく、予定した通りの完成物を得るためのショートカットであるはずです。
けれどもこの「予定通り」は、イレギュラーを嫌い、偶然を妨げ、無駄を省きたがるという意味で、最終的な成果物も、そこに至るまでのプロセスも、想像力の範囲内に収まってしまいがちです。そこには驚きがなく、臨機応変な対応もなく、いわば「予定調和」だけが待っています。不安とは「安定がない」ことに由来する心の動揺ですが、予定調和はそこに「予定通り」の「安心」をもたらします。
LITTLE MAN BOOKSは、本の最終的な入れ物(それは形式とでも呼べるものです)の大まかなビジョンは決めておきますが、それはあくまでも形にすぎず、その入れ物をどのような内容で埋めるのかは決めることなく制作を始めます。重要なのは、この「とりあえず始めてみる」ということです。大まかなビジョンによって向かうべき大まかな方向は決めておきますが、あとは「とりあえず一歩を踏み出す」ことに委ねるのです。
とりあえず一歩を踏み出すと、それがどれだけ小さな一歩であったとしても、視界が変わります。そして新しい視界のもと、次の一歩をどちらの方向に向けて踏み出そうかと考えます。このような具合に一歩、一歩と歩を進めていくと、視界の変化は大きなものとなり、一歩の連続が大きな距離となって、最初の開始位置から随分と離れたところまで来ていることに気づきます。
ここで重要なことは、歩を進めていくにつれ、小さな差異はその積み重ねによって大きな差異へと変化しているということです。小さな一歩の積み重ね、つまり小さな判断の積み重ねは、結果的にまったく異なる世界へと人を導いていきます。そして、それら個々の判断、一歩の中には、「決定的」なものと、そこで得られた決定を先へと伸ばしていく「延長」的なものの両方が含まれています。
「決定的」な判断は、歩を進める道程によって描かれる線のいわば「結節点」のようなものであり、そこでの判断は、描かれる線の形状に大きな影響を与えます。そしてその結節点から伸びる延長線は、その「決定的」な判断を起点としてその判断を強調して伸びる「余韻の線」です。余韻の線は決定的な判断の「響き」「反響」であり、結節点での「判断」の強さによって、どこまで伸びることができるかが決まります。