整理/補完/肯定①

「整理」とは、コンテンツを構成する各要素を机のような水平面に並べ、全体を2次元的に把握しやすくした上で行われる編集作業である。

編集者は、著者からのアウトプットをインプットし、適切に「整理/補完/肯定」した上で、著者へのアウトプットを行う。著者からのアウトプットで得られたコンテンツは、その全体を細かく分割することで、編集の対象となる。この分割されたあとの最小単位を、ここでは「要素」と呼ぶ。整理/補完/肯定は、この「要素」に対して行われる処理の内容である。

まず「整理」について。整理は編集作業のもっとも一般的な方法で、例えば次のような作業が含まれる。

①移動
②分類
③結合
④分割
⑤階層化

①移動は、本が単線的なメディアであることに起因する作業である。本は、コンテンツの各要素が前後に配置されることで構成される。著者の持つコンテンツは、本という形態へと置き換えられる過程で、この前後関係に基づいて再構成される。この、本という形態を前提とした前後関係の調整が「移動」である。A、B、Cという要素があった場合に、A→C→Bという並びが適切なのか、B→C→Aという並びが適切なのか、C→A→Bという並びが適切なのかを判断するのが、「移動」の作業になる。

②分類は、互いに近似する複数の要素をまとめ、区分する作業である。最小単位としての要素を共通の特徴等によってグルーピングし、1つのまとまりとして取り扱えるようにする。分類されたまとまりは、それ自体もまた、①移動や③結合、④分割の対象となる。分類による整理には、要素という細かな単位ではなく、ある程度のまとまりで編集を行えるという利点がある。「分類」は⑤階層化に似ているが、この段階ではいまだ要素のグループ化の域を出ていない。「階層化」の前準備として「分類」を行うのが一般的だが、「分類」を飛ばして一気に「階層化」を行う場合もある。

③結合は、それまで複数に分かれていた要素を1つの要素としてまとめなおす作業である。コンテンツはその全体を細かな要素に分割されて処理されるが、中には、内容が重複するものも含まれる。こうした内容の重複する要素を1つの要素としてまとめるのが「結合」である。内容がまったく同一であることによる結合もあれば、一部の重複による結合もある。後者の場合、結合前と後とでは、その要素の内容には変更が加えられている。また、結合の結果あふれた内容を、④分割する場合もある。

④分割は、それまで1つにまとめられていた要素を、複数の要素に分ける作業である。コンテンツはその全体を細かな要素に分割されて処理されるが、中には、さらに細かく分割するべき要素も含まれる。要素はある一定の同一性に基づいて分割されていなければならないが、その同一性が不十分であったり、より細分化したほうが要素の同一性が明確になるような場合に「分割」を行う。「分割」を行った結果、場合によっては、分割後の要素がほかの要素に③結合されるといったことも行われる。

⑤階層化は、いわゆるアウトラインの作成である。本の構成に「章節項」という区分があるが、これは章の下(中)に節が、節の下(中)に項がある、といった階層構造をなしている。コンテンツを分割した諸要素を、章、節、項のそれぞれに振り分けていくのが「階層化」の作業である。階層化は②分類に似ているが、分類されたまとまりに対して「階層」という構造を与えている点で、分類よりも先に進んでいる。また「階層化」によってあらかじめ区画を割っておき、その中に各要素を配置していくという順番で編集を進める場合もある。

上記の①~⑤に代表される「整理」は、いずれも水平的な編集作業であるといえる。水平的というのは、整理が、本という単線的な軸を想定して配置された要素群に対して行われる作業だからである。整理に際して、これらの要素群はあらかじめ配置されてあり、またここに新しい要素が追加されたり削除されたりすることはない(追加や削除が行われるのは次の「補完」になる)。また階層化は、ツリー状の階層構造を作るという点で垂直方向のイメージを喚起させるかもしれないが、本の構成上は章節項という階層もまた単線的に配置されるものであるため、やはり水平方向の編集作業であると言える。

「整理」とは、コンテンツを構成する各要素を机のような水平面に並べ、全体を2次元的に把握しやすくした上で行われる編集作業である。この水平面は、著者および編集者がコンテンツの最新の状態を確認するための台であり、ゲーム盤である。ゲーム盤を使ってゲームを始めるためには、駒を並べる作業が必要になる。この駒を並べる作業は、著者からの事前のアウトプットや、企画書、目次案、前回の打ち合わせ等によってあらかじめ行われている。「整理」では、このあらかじめ用意された駒のみを使ってゲームが進行する。そこにドラスティックな変更を加えていくのは、次の「補完」ということになる。

2020/1/27
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