Timely/Timeless

こんにちは。
LITTLE MAN BOOKSの大和田です。

前回、「待つ」ということについての文章を書きましたが、LITTLE MAN BOOKSでは、同時にもう1つ別のアプローチについても考えています。「待つ」ことによる本の制作は、多くの場合、時間がかかります。必要な時間を必要なだけかけることによって本が完成するのを待つわけですから、当然です。

「待つ」ことによって作られた本は、完成までにかけられた時間の堆積をそのうちに含んでいます。その結果、「超」時間的なものとなります。時間軸の中のどこか一時点というわけではなく、ある期間の時間をそのうちに含んでいることから「タイムレス」な存在になるのです。それを「普遍的」と言い換えることもできます。

完成までの「待つ」時間は、本が「普遍的」なものになるための時間、と考えることができます。タイムレスな存在は、タイムレスであるがゆえに、長く生きることができます。時間を超越しているがゆえに現在との関係は薄く、それだけ、新しい/古いという基準で計れない、つまり時間とは無縁であるという特徴があるのです。

何千年も生きた動物が、あるとき妖怪になる、という逸話があります。これは、「長い時間を経ることで時間を超越した存在になる」という方程式が、昔から存在してきたことを表しています。これほど大げさな話ではありませんが、「待つ」ことによる本の制作には、こうした妖怪への変化に近い考え方があると思います。

そして、LITTLE MAN BOOKSが考えているもう1つのアプローチが、「今」による本の作り方です。それはタイムレスではなく、タイムリーなものとして本を作るという方法です。「普遍」へと至るプロセスの中には、「現在」の連続があります。現在の細かい積み重ねの先に、無時間的な結果があるわけです。この「現在」を抽出することが、本を作るためのもう1つの方法なのです。

「今」によるアプローチは、一般にZINEと呼ばれる本の形が近いと思います。ZINEは多くの場合、ページが少なく、それほど高価でなく、簡素な作りのものが一般的です。ZINEはその制作に時間をかけるのではなく、「今」をすばやく本の形へと落とし込み、読者に届けることを意図しています。ZINEの語源はよくわかりませんが、MAGAZINEのZINEと捉えれば合点がいきます。

「今」によるアプローチで重要なことは、「今」をリアルタイムに近いタイミングで報せる「現報性」です。時間というプロセスの中で、あらゆるものは変化を続けています。こうした変化のプロセスを即時的に捉え、アウトプットされた本は、読者に対して「現在進行形」を伝える価値を持つことになります。

タイムリーな成果物は、時間の経過とともに過去のものとなっていきます。しかしこうした特徴は、「今」によるアプローチの価値を減らすものではありません。問題は「何を優先するか」であって、「どちらが優れているか」ではありません。優劣や善悪、価値の多寡ではなく、「その方法が必要かどうか」という観点で選択するべきでしょう。

本というのは重いメディアです。タイムリーなアプローチによって、本の重いメディアという性質が変わることはありません。それでも、「今」によるアプローチによって、インターネットのような軽いメディアのあり方に少しばかり近づくことになります。それは、「本」という形態の新しい可能性を切り開くものです。